マルジェラの世界観
常識に囚われないアバンギャルドなデザインで、ファッション界において圧倒的な存在感を放ち続けるメゾン・マルジェラ。
数多くの謎に包まれた創設者マルタン・マルジェラがメゾンに込めた想いから、日本との繋がりなども含めマルジェラについての基礎知識を簡単にまとめていきたいと思います。
マルタン・マルジェラの来歴
メゾン・マルタン・マルジェラ(現メゾン・マルジェラ)の創設者であり、2008年までデザイナーを務めたマルタン・マルジェラは、1957年ベルギーのルーヴェン出身。
世界最古のカトリック大学があるほか、芸術的な建造物が建ち並ぶなど学問とアートが特徴の街で生まれ育った彼は、アントワープ王立芸術学院へ進学。
数多くの有名なデザイナーを輩出しているベルギー屈指の名門校において、さらにその中でも特別な存在である”アントワープの6人”と並び称され、1988年に自身のレーベルであるメゾンマルタンマルジェラを創設。翌1989年にはパリコレクションにプレタポルテでデビューしました。
彼と彼のチームが手がける服、そしてショーはとにかく革新的で、今までの常識を全否定するかのような挑戦的なものでした。
アンチモードを掲げ、デコルティケという洋服の核となる部分のみ残し他を剥ぎ取る技術、メゾン独自の哲学的視点で衣服を再構築するデコンストラクション(脱構築)という技術はマルジェラを語る上で欠かせないキーワードです。
オートクチュールに相当するアーティザナルというラインでは、マルジェラのチームが世界中を旅して収集したヴィンテージなどを解体、再構築し新たな衣服として制作します。
スニーカーを解体してベストに作り変えたり、ミリタリーバッグを解体してジャケットにするなどアイテムに新たな命を吹き込むアップサイクルはマルジェラのお家芸です。
現代では当たり前となったダメージデニムはマルジェラが世界で最初に考案したものと言っていいでしょう。
軍服のリメイクやぼろぼろになったニット、糸の縫い目をあえて外側に露出させるデザインなど、まるで貧困層に見えるような服の数々は、高級志向が強まっていた1980年代の社会に対するメゾンなりのアンチテーゼと言えるかもしれません。
また、廃校の運動場や墓地、空き地などでショーを開催し、近隣の子供たちがランウェイを闊歩するモデルを観覧席の最前列から物珍しそうに見つめ、時にはモデルの着ている衣服を引っ張ったりする様子も見受けられるなど、とにかく過去の常識を覆しファッション史に名を刻む一大ブランドとしての地位を確立しました。
しかしメゾンが成長するにつれて、マルタン自身は表舞台から姿を消していきます。
顔写真は1997年に撮影された一枚を最後に現在まで出てきていないし、取材も全てFAXでの対応。ショーの後に登場することもなく、撮影が許可されたのは彼の手のみ。Anonymity(匿名性)という言葉は彼を表現する上で最も適しているでしょう。
その気になれば富と名声を思うままにすることができたはずですが、90年代中期に顕著であったセレブリティ文化に嫌悪感を示した彼は、自分が世間の注目の的となることは決して望みませんでした。
ブランド名やデザイナー、またメディアによってつくりあげられたイメージではなく、服本来の魅力、そしてそれをつくるチームやメゾンとしての哲学にスポットライトが当たることを彼は望みました。
ところで、皆さんはマルジェラと聞いて一体何を連想するでしょうか。
1992年に発表されて以来、ブランドの象徴的なアイテムとなったTabiを始め、元サッカー日本代表の中田英寿も愛用する八の字ライダース、エルボーパッチやエイズTシャツなど有名なアイテムが数多く存在しますが、今回はその中でもほぼ全てのアイテムに付けられている”4ステッチ”に注目してみます。
マルジェラといえば
ファッション感度の高い方であれば、街中でこの4本の縫い目を見かければすぐにそれがマルジェラの服であると気付くでしょう。
もはや代名詞となっているこのステッチは、シンプルなデザインにも個性を与えてくれる、一つのアクセントとして浸透しています。
ですが本来は、マルタンはこの4ステッチを我々消費者が簡単に取り外せるよう、あえて4隅を簡単に止めるだけにしているのです。
ブランドの証明となるタグ、それを取り外しブランドとしての価値を取り除いても、その服に価値はあるのかという問いを投げかけているのです。いかにもマルタンらしい工夫ですね。
また、今ではマルジェラのタグには”カレンダーロゴ”という有名なデザインが施されていますが、ブランドが立ち上がって間もない頃はカレンダーロゴもない真っ白なタグが付けられているだけでした。
これはマルジェラのクリエイティブ/ビジネスパートナーとしてメゾンの立ち上げに多大な影響を与えたジェニー・メイレンスの発案でした。
こうしたマルタンの意思に同調し、ステッチを切り取る熱烈なファンもいることは確かです。
しかし一方で、現代ではマルジェラの象徴となったステッチを身につけることでメゾンへの帰属意識を得る者もいれば、ステッチを一つのアクセントとして楽しむ者もいるなど、ファッションの楽しみ方は多岐にわたります。
たった4つの縫い目だけでもこれほどファッションの奥深さを感じさせるマルタン・マルジェラの世界観はさすがと言えますね。
そんな独特な世界観を放つメゾン・マルジェラですが、世界初の旗艦店は、ここ日本にある、恵比寿店であるということはご存知だったでしょうか?
日本とのつながり
日本での需要が非常に高く、中でも仙台市にあるセレクトショップ”Revolution”は進出当初からの大取引先で、マルジェラの売り上げ世界一を記録したこともあるとのことです。
また、マルタンは日本が誇る世界的デザイナーの川久保玲に強く感銘を受けた一人であると知られています。ジェニーが川久保にマルジェラの靴を売り込み、一足購入してもらったということを知った彼は大喜びしたそうです。
こうした日本とマルジェラの間の強い繋がりは、非常に親近感を感じますね。
マルジェラの今
彼は2008年にメゾンから退き、2014年10月からはイギリス人デザイナー、ジョン・ガリアーノがクリエイティブディレクターとして就任します。
またその翌年2015年にはブランド名を現在のメゾン・マルジェラに変更。
マルタンはキャリア終盤にメゾンのアーティスティックディレクターに就任しますが、その役割は彼の本意とは異なる者だったと言います。
彼の本業は服を作ることであり、ビジネス色の強くなっていた業界に嫌気がさしたことが引退の要因でしょう。
ガリアーノがメゾンの舵を取り始めてから、多少の変化はありましたが、それでもマルタンの意思や技術は確実に受け継がれています。前述のTabiシリーズやエルボーパッチなどはもちろん、2019年からスタートしたEvolutionというスニーカーのラインは、様々なカラーや異素材の組み合わせを特徴とし、マルジェラの掲げるレコンストラクション(再構築)を表現する新たなラインとなっています。
また、最近ではマルジェラとリーボックのコラボレーションも話題となりましたね。
Maison Margiela × Reebok
バランススタイルでも大好評発売中の、こちらの”Maison Margiela × Reebok Club C sneakers”ですが、一見するとどこにでもあるようなスニーカーにもマルジェラの遊び心が隠されています。
実はこれ、スニーカーの縫い目や曲線など、全てプリントによって描かれているのです。
騙し絵のようなデザインとなっていて、メゾン・マルジェラ伝統のトロンプイユ(騙し絵)の技術が施されているのです。シンプルなスニーカーにも個性を与えてくれて、周りと差をつけたい方にはぴったりのアイテムと言えるでしょう。
いかがでしたでしょうか?
メゾン・マルジェラは独特な世界観を持つファッション界の異端児とも言える存在です。
そうしたメゾンの歴史に興味を持っていただけた方はぜひ、バランススタイルのMaison Margiela商品ページを訪れてみてはいかがでしょうか。
また、バランススタイル千駄ヶ谷店でも多くのアイテムを取り扱っております。
皆様のご来店、心よりお待ちしております!
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