中編:〜世界を飛び回る美容師にしか見えない裏側〜「ワールドカップ期間中、選手たちのピッチで見せない顔とか、メディアに見せない顔、家族にも見せない顔も見てると思います」
ーー他にはどんな選手の髪を切ったことがありますか?
林勲氏(以下、林):アジアカップとかに行くと、そこにいる日本代表選手のことを十数人切ることもありますね。日本でも切っているのは森重選手などです。彼は本当にいいイケメンなんですよ(笑)。カメラを通して見るよりも本当にイケメンなんです。そこは、本当にギャップでしたね。
ーーサッカー選手ってそれぞれいろんな形(人柄やギャップ)があって面白いですよね。
林:それは、サッカー選手は迷っていると思うんです。
もちろんサッカーが本業なんですけど、サッカーだけではダメだと思う選手が増えてきていて、副業する選手もいれば会社を立ち上げる選手も色々出てきていますよね。
まだ自分のキャラが出来上がっていない子たちもいっぱいいるだろうし、プロになりたての子はまだ高校生みたいな感じだったりする。その中でいろんな大人と接してすごい悩ましいんだと思います。
ーー話は戻りますが、海外に行ったのは西暦何年の時ですか?
林:2002年にドイツに行きました。当時、日本でワールドカップがあるのに、それを観戦しないでなんで行くんだって言われたんですけど、その時はサッカーに対して全然興味がなかったので、ドイツに行きました(笑)。
確か、日韓ワールドカップの後に中田選手を切り始めたんだと思います。
ーーということは、サッカー選手の髪を切り始めて約20年ってことですね!
林:そうなりますね。20年間、毎月飛行機に乗ってどこかの国に行ってます(笑)。
ーーすごいですね(笑)。ワールドカップも毎回行ってるんですか?
林:そうですね。2006年から行ってます。2006年のドイツワールドカップは、中田英寿選手、大黒将志選手、中田浩二選手とかの髪を切りました。
ーー2010年南アフリカも行ってましたよね。
林:行ってましたね。
ーー2014年ブラジル…
林:ブラジルも行ってましたね〜(笑)
ーー2018年ロシア…(笑)
林:ロシア行ってましたね〜(笑)。行ってますね〜(笑)
ーーすごいですね(笑)。ワールドカップ中に選手の髪を切っていた中で、記憶に残っているエピソードとかありますか?
林:本田圭佑選手の担当で行った2014年のブラジルワールドカップですね。本田選手もそうですし、チーム全員が真面目に優勝しようとしてるじゃないですか。その中で、1ヶ月間の大会期間中、どのタイミングで髪を切るかというのがすごい難しかったですね。
最初の方に切ると最後また行かなきゃいけないので、さぁどこで切ろうってなった時に、予選終わった時にしようって決まったんです。
でも、皆さん知っている通り予選で終わっちゃって…。
結局、トーナメント行けませんって決まった日の夜に切りました。
ーーそんなことがあったんですね。雰囲気的に気まずくなかったですか?(笑)
林:その時は、本田選手と岡崎選手を切ったんですけど、ぶっちゃけ落ち込んでました。
こっちもブラジルまで来てどんよりかよ、みたいな(笑)。
ーーワールドカップ期間中、選手たちのピッチで見せない顔とか、メディアに見せない顔、家族にも見せない顔も見てそうですよね。
林:あー、多分見てると思いますね。
ーーワールドカップ中、選手は家族と会えるんですか?
林:家族は会えるけど、頻繁には会えないと思います。1日許された日に会うとかそんな感じだったと思いますね。
ーー林さんが切る時はあまり誰とも遭遇しないタイミングですよね。
林:そうですね。多分ほんと僕だけだと思います。
ーー逆に、2010年のワールドカップの時はそこまで日本代表の前評判が高くなかったように思います。その時はいつ髪を切ったんですか?
林:あの時は、トーナメント進んだ時に切りに行きました。それで、予選のデンマーク戦の時に本田選手の髪がボサボサだったから、うわタイミング失敗したねって話してたのを覚えてます(笑)。
ーーやっぱり、ゴールを決めるとテレビにアップされる回数も増えると思いますが、そこのビジュアルは本田選手も結構意識しているんでしょうか?
林:はい、そうですね。そこの意識は高いですね。逆に、そうじゃないとなって思います。子供たちがカッコいい人になりたいって考えたら、かっこいい選手がいればいるほどサッカー選手になりたいと思うのは当たり前ですしね。
美容師になりたい人も一時期はいっぱいいたんですけどね…(笑)
稼げないってわかっちゃったから。仕事の拘束時間や努力の割に稼げないと思う人が増えているじゃないですか。
だけど僕の中では、それでもやることやっていけば絶対にいい給料もらえると思います。
そこは考え方を色々変えて、無駄なものは削除して、必要なものでもっと力強い美容院作っちゃえば全然普通に暮らせるくらいはもらえるわけなんです。
そういう形でウチも今やっています。
ーー具体的にどんなことをやってるんですか?
林:頑張った美容師が報われるような美容院を作るっていうのが目標なんです。
頑張ってない子を救うことはしないけど、頑張った子にはそれなりの報酬をもらえる美容院。サッカー選手もそうだと思いますが、それがプロの世界だと僕は思っています。
ーーそういう話も含めて、サッカー選手と職業について話したりすることもあるんですか?
林:めちゃくちゃしますね。特に本田選手とは話します。
ーー本田選手は、美容師という職業をどんな風に捉えているのでしょうか。
林:んー、どんな風に捉えているんだろう。いや〜どんな風に考えているんでしょうね。
それは考えたことないですけど、(僕が思うには)みんな仕事をしていて、上見たらキリがない部分とか、他業種と比べたらキリがない部分もあると思うんです。その中で、自分の業界の中で一番になる方が幸せだと感じます。1
本田選手たちがやっていることはすごい大きなことで、大きなものを動かしています。だけど、僕らは毎日コツコツやることの繰り返しで、どこまで成熟させていくかが大事。
ビジネスとして比べることはありますが、大事な部分は別に儲かる儲からないじゃないというか。(サッカー選手も美容師も)自分でなんとかやっていかなきゃいけない職業だと思います。
ーー選手、お客様でもそうですけど、気を遣っているところはありますか?
林:一番気を使っているのは、「再現性」ですね。
「再現性」というのは、家でも同じように作れるヘアセットのこと。
これは美容師になってずっと考えていることでもあって、それはサッカー選手にはすごいどハマりするものなんですよ。
普段の試合の時は自分でセットするしかないので、それがしっかり形になるというのは大きいと思います。
サッカー選手のことを皆さんが見ているものは試合の映像が多いというのもあります。
タレントさんは、ヘアメイクさんがいるから、再現性はあまり関係ないんですよね。もちろん、女性のお客様さんでも再現性を求めてやるんですけど、タレントさんとサッカー選手の違いはそこがすごく大きいなって思います。
〜次回配信予定日〜
8月14日(土)12:00 後編&リクルート編:〜これからのビジョンと挑戦したいこと〜
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前編はこちら>>>
前編:〜サッカー選手の髪を切るようになるまで〜「一番最初に髪を切ったサッカー選手は中田英寿さん」
店舗紹介
『Ambesten 代官山』
Ambestenとは、 ドイツ語で『最高の、最上級の』という意味。 最高の仲間達と、 心に残る最上級のおもてなしを提供している美容室です。
住所/東京都渋谷区猿楽町28-10モードコスモスビル2F
電話番号/03-3462-1158
公式サイト/https://www.ambesten.jp/
『Ambesten Düsseldorf』
Ambestenの一号店。ドイツのデュッセルドルフに店舗を構えており、現地の方々はもちろんのこと、ドイツ在住日本人からも愛される美容室です。
住所/Klosterstr. 62,40211 Düsseldorf
TEL/0179-7624023