後編:〜海外を身近にする道筋を作る先駆者になるために〜
「ヨーロッパで監督をやってみたいし、日本が2050年のW杯で優勝するためにチャレンジしていきたい」
ーー今松原さんが日本サッカー界に働きかけていることは、ストライカー以外だとどんなことがあるのでしょうか?
松原:今はゴールキーパーについて働きかけています。ガンバ大阪では元日本代表の大黒将志さんがJリーグ初のストライカーコーチになりましたが、同じようなことをゴールキーパーでも出来るようにしたいですね。
GK育成についての論文は、JFA GKプロジェクトリーダーの川俣則幸さんや、川口能活さん、小島伸幸さん、楢崎正剛さん、川島永嗣選手、シュミットダニエル選手を中心に手伝ってもらったりして、もうちょっとしたら出来上がります。
もう2年もかかって論文書いてるから、本当長いよ〜(笑)。
ーーどのくらいのボリュームの論文なんでしょうか?
松原:原稿用紙何十ページってところですかね。でも量を書けばいいってことじゃなくて、質が大事ですね。(論文を書くには)作法というのがあって、ちゃんとした書き方があるんです。研究論文や博士論文などの論文の種類によっても書き方が違うし、その辺はすごく難しいです。
論文というのは、共同研究者が大事なんです。どういう人と一緒に論文を書いていくか。考え方が合わない人とやると、時間もかかるし良い論文にならないです。何事も一緒じゃないですか、サッカーチームもそうだと思います。レベルの高い人たちと取り組むと解決の方法も知っていて、チームもやっぱり良くなります。
ーーその論文が発表されて、また新しいプロジェクトが出来上がる可能性もあるんですね。
松原:そうですね。論文以外にも、試合解説の中ではストライカーとかキーパーのことをあえて言うようにしています。僕の活動(論文や解説、指導)が育成、普及、強化にも繋がってくようにすることが狙いです。
研究者が研究論文を作ってもそれがなかなか世の中で活かしきれていないように思います。それが、課題や研究の難しさでもあるけれど、僕はサッカー界でそれらを浸透させて活用させていきたいです。
ーー解説でも深く考えているんですね。松原さんが解説者の時に気にしていることはなんでしょうか?
松原:解説では、選手をリスペクトすること、褒めることを意識し、聞いてる人にとってわかりやすく、正しいことを、できるだけシンプルで的確に伝えるよう気を付けています。
自分が伝えたいことだけじゃなくて、視聴者が求めることにもできるだけ応えることですね。でも、解説で外から言うのは簡単なんですよ。「じゃあやれよ」ってなるとそれがまた難しいんですよね。
でも僕はあくまで現場でやる側。だから、解説はさっき言った通り、聞いてる人にとってよりわかりやすく、できるだけ耳に入りやすいようにやろうと思っています。
特にストライカーやゴールキーパーのことは、言及しようと思いますし、ウルグアイ、アルゼンチン、ブラジルの人とは普段からよく連絡も取っているので、海外の人から聞いた世界の情報を伝えられたらいいなとずっと思っています。また、僕はプレーヤーだったのと、指導者、研究者でもあるので、それらの経験も踏まえて伝えていきたいです。
そのようなよりコアな情報をSNSでも発信していきたいのですが、まだSNSの活用の仕方もあんまり上手くないから(笑)。
今後は、SNSなどをうまく活用しながら、この人こういうことやってるんだ、こういう考え方しているんだっていうのが伝わっていけばいいですね。
ーーでは、指導者として気をつけていることはなんでしょうか?
松原:サッカーの原理原則を教えることと、目的と手段をはき違えないようにすること。それから、心で教えることですね。
やらせるっていうのは駄目です。パスを出すときに、出すボールにメッセージがないといけないですよね。苦しいから渡すんじゃなくて、このボールをどうしたいか、どうしてほしいのかを考えてパスしないと駄目だと思います。そこはいつも大事にしながら指導を行っています。
ーーサッカーの指導でも、全体的に人間の育成っていうところに力を入れているんですね。
松原:そうですね。僕が指導で一番大切にしていることは、自立した主体性のある選手を育成することです。トップチームであれば、攻撃的な魅力あるサッカーで勝利すること。もちろん技術論や戦術論も大事ですけど、究極は個人だと思っているので、やっぱりその個人の良さをグループ、さらにチームで活かせるようなサッカーを僕はしたいなって思ってます。世界を上回るためには、個、タレントの力はマストですから。戦い方については、攻撃的なサッカーが 大好きですね(笑)。
ーー海外で好きなチームや目標にしているチームはありますか?
松原:ウルグアイでの影響がやっぱり僕は強いので、堅守だけど攻撃的な部分もあるウルグアイですかね。だってストライカーでヨーロッパのリーグで得点王になったのはフォルランでしょ、カバーニでしょ、スアレスもいる。近年で3人も得点王になっている選手がいる国はなかなかないですよ。
さらに、後ろにはゴディンやヒメネスがいて、守備も堅いですけど、攻撃のタレント性を上手く活かしていますよね。ウルグアイは、組織的で堅守速攻のサッカーから、ボールを大事にする緩急のあるサッカーに変わってきました。そこに、個性のあるスアレス、カバーニ、バルベルデなどが揃う。チームの形がはっきりしながら、選手の個性も光るチームは魅力的です。
最近よく言われてますが、戦術的なところで言うと、コロナの影響で5人交代がありますよね。戦術も含めて監督の力で試合の結果が変わったとか、そういう采配もやりたいですね。
ーーなるほど。松原さんの采配のおかげで勝ったと言われる試合もあるかもしれないですね。
松原:そうならないといけないですよね。モウリーニョもコンテもそうだし、クロップも、優勝するチームは監督の力でチームをガラリと変えてしまう、そんな監督になりたいです。
ーーそうですよね。監督の影響力という意味では、日本は注目度が低いですよね。
松原:そうですね。30代や40代の監督がもっと出てくることや、監督に対するステータスを上げるっていうのは、大事な部分だと思います。
形は違えど、バランススタイルさんが取り組まれている「サッカー」とか「世界」とか「ファッション」など、それもサッカーの価値をすごく高めることだと思いますね。人に見られ注目される立場なので、サッカー選手として活躍していた人にはカッコよくいて欲しいですよね。最終的に引退しても、ヨーロッパの人たちと見た目も中身も対等になっていたいですよね。友人のゾノ(前園真聖)やヒデ(中田英寿)と一緒にいると特に思います。
ーー今の日本人選手のセカンドキャリアについて、松原さんが考えていることはあったりするのでしょうか?
松原:(セカンドキャリアの前に)まずサッカー選手をやりたいっていうふうに思わせないと駄目だと思いますね。そのためには普及活動が大切で、サッカーをする子供が増えないといけません。日本人の特徴でいうとオリンピックもそうですけどいろんなスポーツやりますよね。
今の感じだと、やっぱりサッカーのコンテンツがだんだん減ってきて、試合を見なくなってきている。これは何とかしないといけないんですよ。
J3の選手もいれば、世界で活躍する選手もいますが、サッカー選手になってちゃんと食べていける、夢のある職業だと認知させることが一歩目。そこから、引退後の指導者であるとか、ジャーナリストとか、世界に出るにはいろんな道があることを示していく。そういう道筋が作られていけばいいなとは思いますけどね。また、サッカーを生涯スポーツとして確立させること、サッカー文化を作っていくこと、これはもう、僕は早急に日本サッカー界全体で取り組んでほしいです。
ーー本当に様々な角度から日本サッカー界のことを考えてらっしゃいますね。指導者、解説者、さらに論文も書いて、大忙しじゃないですか。
松原:ありがたいですね。でもね、監督ってマネジメントをするマネージャーだから、自分が足りないところはその道のプロに入ってもらって任せてるんですよ。
そうすると、そのプロからまた(新しい)人間関係ができて、自分のできないところはその道のプロにお任せしていく。攻撃のコーチかもしれないし、GKコーチかもしれない。だから自分の周りの環境ってすごい大事なんですよね。そういった出会いも含めて、人を大事にするっていうことは大切にしています。
ーー事業が大きくなったりとか様々な事業ができるようになってるのはそういった出会いがあるってことですね。
松原:そうですね、人とのご縁でここまでやってこれました。昔は(事業を大きくしたいと)思ったけど、今はもうそうは思ってないですね。今はできることをちゃんと手厚くやっていこうと思ってます。その中で、監督業にはまた戻りたいなと正直思っているし、自分が今まで勉強してきたことを発揮したい。
将来、僕はヨーロッパで(指導者を)やりたいんですよね。できなかったとしても何かマネジメントする立場になったりとか、海外での勝負もやってみたいです。
ーーすごいですね。どんどんやりたいことに挑戦していきますね。
松原:うん、やっぱり我々の世代が(道を)作っていかないと駄目だと思う。日本が2050年のW杯で優勝するには、世界をもっと近くで感じられるようにならないと絶対無理だと思うんです。
ーー2050年のW杯は松原さんが日本代表の監督になっている可能性もありますね。
松原:なれたらいいですね。ただそのためにはまず目の前のことをクリアしないといけないから(笑)。今はまだ夢の話ですが。
でもできないわけじゃないと思うんですよ。周りには笑われるかもしれないけど、本気で自分がやろうと思ったら、そういうふうに取り組めばいいだけだし、なれるかどうかは置いてね。僕も今年で47歳になりますけど、今まで様々な取り組みをしてきて、周りにはいろんな(関わってきた)人たちがいるし、自分だけの問題っていうところではないですよね。やっぱり20代の頃とはまた違いますし。ただそれも含めて自分の責任で、自分次第で全て変わるとは思います。
今回の取材で言ったような、2050年に優勝するためにとか、国際人育成とか、(選手が)持っているものの可能性を広げたいとか、僕には様々な目標があります。その目標を達成するまでの道で苦労はあると思いますが、謙虚な姿勢を忘れず、ポジティブにチャレンジしていきたいなと思いますね。
<完>
トップス:ボーラー / Tシャツ / BLACK LABEL – CLASSIC SHIRT BLACK
ボトムス:ビースラッシュ / ショーツ / 4WAY STRETCH BLACK
ソックス:ビースラッシュ / ソックス / ANKL SOCKS / ブラック
シューズ:ボーラー / スニーカー / CLEAN SNEAKER / BLK
キャップ:ボーラー / キャップ / CLASSIC COTTON CAP BLACK
前編:〜引退後、指導者としてスタートした理由〜「(子供たちに)どんどん可能性を広げてほしいから国際人の育成をしています」
中編:〜国際人の育成、そして日本が世界で勝つために筑波大学院で学んだこと〜「(研究で)ストライカーに必要な要素の答えが3つ出てきました」
株式会社バランススタイルと元アトランタ五輪サッカー日本代表の松原良⾹⽒が“ライフスタイルパートナー”契約を締結!