後編:〜バランススタイルと出会ってからのファッションの変化、そして欠かさないバランスタイムズのチェック〜
「どれが良くてどれを合わせていいのかはすごい参考にしているのでバランスタイムズは重宝しています」
ーー中編のあらすじ
両親が探してくれた「ブラインドサッカー」。ブラインドサッカーがあることを知った加藤氏は、見学して実際に体験したことを機にブラインドサッカーの面白さを身に染みて経験。茨城で寮暮らしをしながら、筑波技術短期大学のブラインドサッカーチームに入団。すぐさま頭角を表し、大学3年生の時に北京五輪・パラリンピックのアジア予選で初めてブラインドサッカー日本代表に選出。その後、長年日本代表の主力メンバーとして活躍。『まずは挑戦してみることが大切なんだな』という部分、人との出会いの大切さをブラインドサッカーを通じて感じた加藤氏。
そして、人との出会いの中には、バランススタイルという会社も、加藤氏のファッション観を変えてくれた出会いとのこと。加藤氏は、バランススタイルと出会ってどう変化していったのか。後編をご覧ください。
ーーバランススタイルとの出会いのきっかけは?
加藤健人氏(以下、加藤):共通の知人がいて侑加さん(当社代表取締役社長)を紹介していただきました。
ーー侑加さんの第一印象を教えてください。
加藤:加藤僕が知り合ったのは、まだバランススタイルの店舗が一つしかなくて、お店も小さい時だったのですが、好きなことをやっていてカッコイイと思いましたし、生き生きしているなというイメージはありました。色々なことに挑戦して先に進んでいるなと感じましたね。
そして、知り合ってから日が経っていく中で、店舗も大きくなり、スタッフの方々、お客様の方々が増えていったことは、素直にすごいなと思いましたね。
侑加さんと話をすると、言葉に力がありますし、すごく良い影響を受けています。僕が取り組んでいた活動の延長線で知り合うことができたこともあって、ファッションだけではなく、様々な部分でサポートしてくれています。
ーーなるほど。その活動というのはどういった活動なのでしょうか?
加藤:ブラインドサッカーは、目が見えない分、コミュニケーションを取るのが大切ですよね。目が見える、見えない関係なく、ブラインドサッカーを体験してもらうことで、コミュニケーションの重要性を伝えていくことも行っています。また、実際に体験してみたり、僕の話を聞いてみたりすることで、体験した子供たちの学校生活などに活かしてもらえると嬉しいと思って様々なことを発信、企画してきました。
今言ったような活動の幅を広げたくて、自分をマネジメントしてくれる方を探している時に出会ったんです。
ーー知人の紹介で知り合い、そこからどのようにバランススタイルと繋がっていったのでしょうか?
加藤:最初はマネジメントというか、バランススタイルに所属するという形でしたが、バランススタイルは選手のマネジメントだけではなくてファッションの方も急激に伸びるようになっていきました。
それで、前々から僕もファッションには興味があったので、バランススタイルで洋服を買うようになったんです。そこからは、マネジメントというよりは、本当に一ファンとしてバランススタイルの顧客になっていきました。あとは、腕時計ブランドとコラボレーションをして、僕がプロデュースしたモデルを作らせてもらった事があるのですが、それもバランススタイルとの繋がりから実現しました。
ーーなるほど。どのような時計を作ったのでしょうか?
加藤:視覚に障がいのある人に向けた腕時計のブランドがあると教えてもらいました。
初めて侑加さんと出会った日に、僕と会う前に腕時計の展示会で、「Bradley(ブラッドリー)」という視覚に障がいのある人に向けた腕時計を見たらしいんです。サンプルを持ってきてくれて「こういう時計あるの知ってる?」と言われて、視覚に障がいのある人用のオシャレな腕時計があるのを知りました。
ーーそんな腕時計のブランドがあるんですね。初めて知りました。
加藤:これまでは視覚障がい者用の腕時計はデザイン性にこだわっていなかったこともあって、どちらかというとデザインにこだわっていない時計が多かったんですよね。視覚障がい者用の腕時計の多くが、読み上げ式や蓋を開けて針をさわる触読時計でした。
その概念を覆して、スタイリッシュな腕時計として誕生したのが「Bradley」です。
ーーそうなんですね。「Bradley」を知ってからどのようにオリジナルの時計の話が進んでいったのでしょうか?
加藤:紹介してもらった視覚に障がいのある人用の腕時計は、「さわる時計 Bradley」というシリーズの時計でした。この時計の特徴は、針がなく、代わりに2つのボールが動きながら“時間”と“分”を示してくれるんです。もちろん、外見でも分かりますし、触っても分かるので、“視覚障がい者用”ではなく誰でも使えます。
これは、僕がファッションを好きな理由とも似ていて、障害が有る無し関係なく混ざり合うというか一緒のことをするというのが大事だと思っているんです。そうした気持ちを侑加さんも共感してくださって、「さわる時計 Bradley」に色々と連絡を取り合ってもらいました。
結構時間はかかったのですが、打ち合わせを重ねて、まさかできるとは思わなかった「カトケンモデル」が出来上がったんです。
ーーカトケンモデルですか。自分の名前が付いた時計なんてすごいですね。
加藤:僕もまさかできると思っていなかったです。その上、第1弾、第2弾と続いていったのでありがたかったですね。
カトケンモデルを作ったことは、コミュニケーションのきっかけ作りという意味でも魅力になりました。この時計を付けていることで「それなんですか?」という会話が始まることが多く、コミュニケーションの大切さを引き出してくれる時計だと思います。
視覚に障害を持っている方も、持っていない方も、この時計を着けることで、この時計の話をしたり、そこから話が広がったりすることでコミュニケーションの機会が増えれば嬉しいなと思っていますね。
ーー珍しい時計なので、気になる方は多そうですよね。カトケンモデルでこだわった部分はどんなポイントでしょうか?
加藤:第二弾のアイテムは、かなりこだわりました。ファッションに関わりたいという気持ちがずっとあった中で、時計をプロデュースするということが現実で挑戦できたので、「挑戦する気持ち」っていうのを大切にしたいなと思ったんです。
僕が好きなブラックレザーバンドに、これも僕が好きなブラインドサッカーの掛け声 “Voy” という言葉や金色で刺繍をしてもらいました。テーマとして「上を目指す」という意味合いを込めて、作って欲しいデザインを落とし込んで作成しましたね。
ーーそうなんですね。ファッションにもこだわりが強いと思うのですが、以前はどのようなファッションが好きだったのでしょうか?
加藤:大学生ぐらいから東京に憧れを持つようになり、僕が若かった頃はストリートファッションが流行っていた時代だったので、ストリートファッションが好きでしたね。
ーーバランススタイルに出会って、以前好きだったファッションのスタイルに変化はありましたか?
加藤:最初はバランススタイルで取り扱っているブランドは知らなかったのですが、サッカー選手としてサッカー選手が着てたり履いてたりするブランドにはやっぱり憧れがあるじゃないですか。
そういう気持ちの変化もあって、同じもの着たいな、同じもの履きたいなっていうのはあったのでそこでバランススタイルのブランドを買うようになりましたね。よりスポーティなスタイルを着る意識は自分の中で高まりました。
派手なアイテムよりかはシンプルに合わせやすい服やモノトーンのスタイリングが多く、バランススタイルの中でもどちらかというとシンプルな服が好きですかね。
ーーバランススタイルでのお買い物の際はどうコーディネートを組んでいるんですか?
加藤:携帯の音声読み上げ機能を使って、バランスタイムズを読んで、気になったアイテムを自分の中でイメージしてからお店に行ってスタッフの方々と話しながらコーディネートを決めてますね。
ーーバランスタイムズを読んでくださっているんですね!ありがとうございます。
加藤:こちらこそ助かっていますよ。ブランドもアイテムもたくさんある中で、どれが良くてどれを合わせていいのかはすごい参考にしているのでバランスタイムズは重宝していますね。
ーー好きなブランドはなんでしょうか?
加藤:「ボーラー(BALR.)」はシンプルなアイテムが多く、着心地もいいのでお気に入りです。あとはバランススタイルのオリジナルブランドである「ビースラッシュ(B/)」や「ジョカトーレ(GIOCATORE)」は注目しています。
ーーありがとうございます。次はご家族についてお聞きしたいと思います。ご結婚されているとのことですが、奥様との出会いを教えてください。
加藤:元々はブラインドサッカーですね。今は埼玉のチームにキャプテンとして所属しているのですが、以前は人数が揃わなくて活動しにくい時がありました。その時にサポートしてくれていた方々の中の1人でしたね。
ーーどのようなサポートをしてくださっていたのでしょうか?
加藤:ブラインドサッカーのサポートです。僕個人というよりかはチームのサポートですね。最初はチームに入ってもらって、ゴール裏のガイド役などをやってくれたりとか色々手伝ってくれていました。
そうしてサポートしに来てくれているうちに、僕の方からお声をかけましたね。出会うきっかけとしてブラインドサッカーは大きかったです。
ーー加藤さんからアプローチしたんですね。そこからどのくらいのお付き合いで結婚されたんですか?
加藤:2年くらいです。間違っていたら大変ですよね(笑)。
ーー少し踏み入った質問になるかと思いますが聞かせてください(笑)。結婚の際のプロポーズの言葉は?
加藤:プロポーズの言葉ですか、、、(笑)。
付き合っている中で、結婚を考え始めたのですが、言うタイミングや言い方で悩んだり、恥ずかしかったりという気持ちがあったんです。そこで、チームの中でも仲の良いメンバーに相談しました。相談すると、チームメイトと奥さんと一緒に食事に行き、その会話の流れでプロポーズすることになりました。
そして当日、チームメイトに予約してもらったお店に行ったら、なんとお店にあるステージのような場所で、お店に居る全員の前でプロポーズしてくれと言われたんです。もう店員さんには伝えてあるからとチームメイトに言われて(笑)。
とても可愛らしい雰囲気でフラダンスなどを踊るようなお店だったので、フラダンスの流れでゲストのような形で紹介されて、ブラインドサッカーの話をしてプロポーズするという流れまで決まっていましたね。
ーーそうなんですね!友人の方も、背中の押し方がとても強引ですね(笑)。お店に居る全員の前でどんな言葉でプロポーズしたのでしょうか?
加藤:知らないお客様もいる中で、「ブラインドサッカーの加藤健人です。ぜひこういうスポーツもあるので皆さん応援してください」という話をしました。その後、お店の方から「今日はこれだけではないですよね?」という振りをいただき、「今日プロポーズしたいと思います」という形でプロポーズをする流れを作ってもらいましたね。言葉はシンプルで、彼女にもステージの方に上がってもらい、指輪を渡しながら「結婚してください」と伝えました。
ーープロポーズの後の奥さんはどんな反応だったのでしょうか?
加藤:びっくりしてましたね。「はい」と言うしかないような状況でしたしね(笑)。
ーーでも、強引な部分はありつつも加藤さんの友人の粋な計らいのおかげですね。
加藤:そうですね。粋すぎる計らいでした(笑)。とにかく緊張しすぎてあまり何を話したか覚えてないですね。結婚してくださいと伝えたことは覚えているのですが、その前のセリフ、プロポーズに持っていくまでの話の流れはほとんど記憶にないです。そのくらいアガっていましたね。
ーー絶対に緊張しますよね。その後、結婚してお子さんが生まれてからの心境の変化はありましたか?
加藤:現在3歳半くらいになる男の子です。これは、僕の病気が発覚した一番最初の話になるのですが、障がいを持った時に、これから先何もできないんじゃないかと思ったと話したのは僕の中で全てのことについてだったんですよね。
全てというのは、進学とか就職のことだけじゃなくて、今後の人生のことも含めてでした。その中にはもちろん結婚や子供のこともあって、そこについても、当時の僕は諦めかけていたんですね。
その経験がある中で、まさか自分が結婚するとは思ってもいませんでしたし、子供を授かるということまで想像はできていなかったので、喜びは本当に大きかったですね。
子供が産まれたことでもっと頑張らないといけないとは思いましたし、守るべきものが増えた感じはしました。子供のためにもという思いが増えましたね。
ーー視力がほとんど無い中での子育てについては?
加藤:誰にとっても1人目は1人目です。言い訳にはなってしまうのですが、見えないから(子育てが)難しいっていうのはもちろんありました。でも、見えないから何もしないというのはおかしな話ですし、自分ができることはやっていこうということでお風呂の入れ方やおむつの変え方を奥さんに教えてもらいながらできることを増やしていきましたね。
ーーなるほど。今ではもう自分で様々な子育てができるように?
加藤:そうですね。保育園の送り迎えも出来るようになりました。できること自体は少しずつ増えていきましたね。
あとは、目が見えないので、子供が何をしているのかわからない時もあるのですが、あまり心配性すぎても良くないなというのもあるので、良い意味で放って置くこともあります。子供だけではなく、自分も成長しながら子育てはしていますね。
ーー家庭について、子育てについてなど、これからの目標などはありますか?
加藤:まだまだ子供も小さい歳で、パパがどんな人なのかをわかってはいないので、それに対して子供にどう接していくのかはすごく考えています。難しいですが、どのように向き合っていくのかを考えていく必要はありますよね。
子供には、僕に例えるとブラインドサッカーのような、自分がこれだというものに出会ってほしいです。僕は、そのきっかけ作りをしてあげられるように、いろいろなことに挑戦させてあげたいなと思いますね。
ーーでは、ブラインドサッカーを含めて、これからの夢や目標を教えてください。
加藤:ブラインドサッカー選手としてどこまでやり続けられるのかはまだわからないですが、ブラインドサッカーを通して経験したことを伝えていくことは自分だからこそできることだと思いますし、やり続けていきたいです。
障がい者に対する理解とか、ブラインドサッカーについて広めていくことは僕じゃなくてもできることなんですけど、僕にしか伝えられないこともあると思うんです。夢や目標を持つことの大切さを伝えられたらいいなと思います。あとは、サッカーをしている子達にブラインドサッカーを取り入れた練習方法をやってもらってサッカーの技術を高めてもらえたらというのは考えています。
ーーなるほど。ブラインドサッカーの練習をサッカーに取り入れるには確かに画期的ですね。
はい。サッカーをしている人たちがアイマスクを付けてボールを触ることで、足の感覚を高めたり、見えない中でプレーすることで周りを見ることの大切さなどを知ることができると思います。1つのトレーニング方法としてアイマスクという選択肢ができるといいなと考えていますね。
サッカーを上手くなるためにブラインドサッカーを取り入れてもらえると嬉しいので、そういったトレーニング方法を考えていけたらいいなと思います。
ーー感覚が研ぎ澄まされていきそうですね。では最後にお聞きします。加藤さんにとってブラインドサッカーとは?
加藤:「自分自身を表現できる場所」です。コートの中では自分が練習してきたことを表現できる場であり、プレーしている瞬間は自分の素を出せているのではないかなと思いますね。
<完>
前編:〜目が見えていた頃のサッカー人生、そして高校3年生で病気が発覚し、視力が低下し始めてからの葛藤〜「自分の中で病気のことをまだまだ受け入れられていない時期もありました」
中編:〜ブラインドサッカーと出会ってからの変化と成長〜「ブラインドサッカーに出会って、夢や目標を持つことができた」
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